研究概要 |
周氷河現象は気候指標として古環境復元等に利用されてきたが,従来の指標は経験的で不正確であった,本研究では,世界各地での周氷河地形変動の調査・観測データとモデル実験結果を総合し,物理的な根拠に基づく高精度の気候指標を策定する.そのために,周氷河現象の分布・規模・形態・構造に関する現地調査結果と,野外観測・室内実験から得られる周氷河現象が「動く時期や速度」と「動く環境・地盤要因」のデータに基づいて,各周氷河現象の分布条件、(地温・地中水分・地盤物性値等)について分析する. 平成21年度は,スイスおよび日本アルプス,北海道中央高地,アラスカ,北極圏スバルバールの各種構造土・周氷河斜面・岩石氷河を対象として,地形変動と環境条件(地温・地中水分・積雪等)や地盤条件の観測と地形の規模・形態・分布・内部構造の詳細な調査・観測を実施した.収集したデータに基づいて,各地形の分布・規模・変動速度と温度条件の関係について解析した.その結果,岩石氷河の変動速度と地温の関係,ソリフラクションと泥流の発生境界条件,氷楔破壊の発生温度等に関する新知見を含めて,各周氷河現象の分布条件が次第に明確になりつつある. ヨーロッパ地球科学連合総会とチャールズ・ハリス教授記念シンポジウム(周氷河地形変動に関する国際シンポジウム)において,研究成果の一部を発表するとともに,海外研究協力者との今後の研究についての討論や観測データの提供の呼びかけを行った.
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