研究課題/領域番号 |
20300297
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中谷 友樹 立命館大学, 文学部, 准教授 (20298722)
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研究分担者 |
松田 亮三 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20260812)
濱野 強 島根大学, プロジェクト研究推進機構, 講師 (80410257)
高尾 総司 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究課, 講師 (50335626)
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キーワード | 健康地理学 / 社会疫学 / 地理情報 / 地理的格差 / ソーシャルキャピタル |
研究概要 |
本研究では、地理的な健康格差を議論しうるミクロデータの整備と分析を課題として、日本の大都市圏を対象とした予備調査(インターネット調査)、本調査(郵送調査)を実施した。本年度は、昨年度に実施した大阪府での本調査資料のクリーニングとその資料分析を中心に,あわせて、昨年度に引き続き、2次利用が認められた社会調査資料であるJGSS(日本版総合社会調査)資料など、各研究分担者が個別に利用可能な健康のミクロ統計資料を再整理し、健康の地理的格差に関与する要因を多角的に検討した。いずれの研究資料においても、世帯人員を調整した世帯所得(等価所得)が高いほど、主観的健康感に優れる関係性が明確であり、所得水準に関連する居住地域分化によって生じる健康格差の構成効果の存在は明確であった。この結果は、市区町村単位での死亡率分布から観測される傾向と概ね整合的である。一方で、文脈的な効果については、ソーシャル・キャピタル論に基づいた信頼感の近隣集計指標や、主観的な近隣環境評価指標、GISを利用した居住地周辺の客観的な建造環境指標が、各種の健康指標を規定する効果について、幅広く検討を行った。一般的信頼感の高い近隣地区において、主観的健康感や健康に関連する行動について良好な結果が得られる傾向は広く確認された。近隣環境指標群は、社会的結束、安全性、歩きやすさの3因子に整理され、社会的結束と歩きやすさの因子は、歩行量との明確な関連性が認められた。JGSS資料で検出された社会地区類型に基づく近隣地区の健康格差は、本調査資料では必ずしも明確ではなかったが、上記の文脈効果を測定する指標と社会地区類型は緩やかに関連しており、健康格差を規定する構成効果・文脈効果要因を、大都市圏の居住地帯分化との関連性とともに整理することは、大都市圏内部での健康格差の成立を理解する上で、一定の意義があるものと考えられた。
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