研究概要 |
南海トラフ沿いの海底活断層を対象に、断層変位地形を詳細に調査・計測する目的のために,海上保安庁などによって取得された測深データを基に駿河湾から四国南西沖に至る海域の詳細な海底地形図の作成を進めている.本年度は,オリジナルデータの仕様が比較的に均質であった遠州沖の海域においてデータの接合とDEM化の処理を進め、詳細な海底地形図が作成することができたので,この海域の海底変動地形を中心に研究を行い、以下のような成果を得た. 1.測深データをもとに3秒メッシュグリッドでDEMを生成し,これから縮尺5万分の1・10m間隔の等深線図と立体画像を作成し,それを基に変動地形学図を作成した.2.変動地形学図を基に,御前崎海脚から志摩海脚に挟まれ海底では,陸棚外縁から遠州トラフと呼ばれる深海平坦面に下る陸棚斜面やその基部に発達する多様な変位地形の判読を行った.3.これらの変動地形がは陸側から遠州灘撓曲帯・遠州トラフ北縁断層・遠州トラフ南縁断層の三つの主要な活構造の運動を反映するものである. ・遠州灘撓曲帯(新称):陸棚斜面から遠州トラフに流下する海底谷は,斜面の上部に向かって穿入蛇行する異常な流路を形成するものがあり,陸棚斜面は撓曲運動によって形成されたものである. ・遠州トラフ北縁断層:遠州トラフの北縁に沿って延びる右横ずれ逆断層である.この断層に沿っては,断層崖や撓曲崖が認められるほか,海底谷の谷筋の右横ずれが認められる. ・遠州トラフ南縁断層:遠州トラフの南縁に沿って延びる南東上がりの推定活断層である.断層に沿って延びる活背斜の存在を推定させる細長い尾根状の地形が認められるが,全体として断層変位地形は不鮮明である.遠州断層帯は、紀伊半島南端沖まで直線的に約200kmにわたって追跡される.
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