研究概要 |
本研究では海上保安庁が取得した詳細測深データから作成した従来とは比較にならない高い分解能の地形画像を用いて解析を行ない,トラフのほぼ全域の活断層の詳細な分布を明らかにし,その連続性や独立性についても議論が十分可能となるデータとして整備した.また,長大な横ずれ断層の発見など数多くの新知見を得た.この結果,巨大地震と関連すると考えられる主要断層の中には,上述の破壊領域区分を超えて連続するものや領域内で連続が途絶えるも少なからず認められ,これまでの推定破壊領域に依存した地震発生予測の再検討が不可欠である.近年,熊野トラフから南海トラフに至る地域の大規模な構造調査結果から深海平坦面にあたる熊野トラフの外孤隆起帯(outer ridge(茂木:1977))の基部に出現する分岐断層が1944年東南海地震の震源断層であるとの説(木村・木下:2009ほか)が有力視されてきつつあるが,この断層は潮岬海底谷を挟んで東西に連続し,潮岬沖に設定された破壊領域境界とは無関係である.一方,1946年南海地震の震源断層は潮岬の東から足摺岬沖に破壊領域を持つと想定されているが,これも分岐断層の位置・形状とは対応しない 新たに認定された活断層の中で1944年地震に対応すると推定される活断層は,熊野トラフ底を横切って延びる逆断層で,東海沖活断層研究会(1999)の遠州断層系の南部にあたり,新鮮な活断層変位地形が認められる活動的な断層である.また,1946年地震に対応する活断層は,太地沖から潮岬海底谷を横切り土佐バエ南縁の急崖の基部を通り,足摺岬南東に達する逆断層であり,徳山ほか(2001)の遠州断層系南部-南海OST断層系-土佐断層系にまたがって連なっている.二つの地震の震源断層の境界は新宮沖にあり,地震に伴う地殻変動や津波発生を説明するのに矛盾はない
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