1.イオン源の改良による感度の向上と湿度依存性の測定 昨年度開発した四塩化炭素への電子付着法を用いて、一次イオンSO_2Cl^-信号の高強度化を試みた。付着電子を発生させるためのフィラメントの駆動条件、四塩化炭素の濃度、導入位置等の最適化を通じ、SO_2Cl^-イオンの信号強度を2.5×10^4counts s^<-1>(cps)から2×10^5counts s^<-1>cpsへと約1桁向上させることができた。それに伴って、亜硝酸の最小検出限界を、昼間の濃度測定が可能な約40pptv(積算時間1分)まで下げることができた。また、感度が湿度に依存しないことを実験的に確かめた。 2.他成分による干渉効果の検討 大気中の他の成分が亜硝酸濃度の測定に及ぼす干渉効果の検討を、実験、量子化学計算の両面から行った。実験では、オゾン、一酸化窒素、二酸化窒素、水蒸気などの干渉効果を調べ、それぞれの成分が単独で亜硝酸と共存する場合の干渉は見られなかった。量子化学計算でも、これらの成分への化学イオン化反応は熱力学的に不利であることが見い出され、実験、計算で矛盾しない結果が得られた。ただし、二酸化窒素と水蒸気の共存下では、亜硝酸が不均一反応により副次的に生成し、正の干渉を与えることが実験的に見い出された。大気インレットを改良して、干渉効果を最小限に抑えるとともに、測定結果の補正式を実験的に求めた。これにより、高湿度、高NOx条件下での定量的な亜硝酸測定が可能となった。
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