研究課題
本研究では一般水環境試料中に含まれるNO_3^-のΔ^<17>O組成を実測し、その水平・鉛直分布や時空間変動、さらに他のパラメータとの比較等を行うことで、水環境中のNO_3^-_<atm>混合比のトレーサーとしてのΔ^<17>O組成の信頼性を検証して、その有用性を実証することを目的としている。他のパラメータとの比較による検証では、全NO_3^-中に占めるNO_3^-_<atm>混合比は、定常状態下ではNO_3^-新生産速度に対する沈着速度の相対比に等しいことを利用する。本年度は前年度に引き続き、以下の5項目について研究を遂行した。(1)北海道札幌市および利尻島に設置したモニタリングステーションにおいて、各種沈着試料を専用サンプラーを用いて捕集・回収し、溶存硝酸イオン濃度はもとより、pH・主要溶存成分濃度・硝酸イオンやアンモニウムイオンの沈着フラックスなどの定量を行い、三酸素をはじめとした各種同位体組成を測定した、(2)広範な種類の陸水試料(市販のミネラルウォーターを含む)を採取して、溶存硝酸イオン濃度をはじめとした主要溶存成分濃度の定量を行い、三酸素などの同位体組成を測定することで、大気沈着由来の硝酸イオンと陸上生態系の広域的な相互作用を定量化した、(3)東京湾内において表面海水試料を時系列で採取し、溶存硝酸イオン濃度を定量するほか、必要に応じて他の基本パラメータ(栄養塩濃度・酸素濃度・ボトル培養に基づく新生産量など)の定量を行うとともに、三酸素を含む同位体組成を実測した、(5)大気沈着に由来する硝酸イオンの全硝酸に占める混合比率を算出する際に立脚したいくつかの仮定に問題が無いか、各水系における硝酸イオン沈着量と新生産量の実測値から検証した。その際、海洋域では、化学輸送モデルを利用して硝酸イオン沈着量を算出した。(6)年度内成果について国内外の学会等で報告するともに、3年間の成果を原著論文にまとめて投稿した。一部は受理・印刷された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) 図書 (2件)
Biogeosciences
巻: 8 ページ: 687-702
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 10 ページ: 1809-1820
低温科学
巻: 68 ページ: 107-120
大気環境学会誌
巻: 45 ページ: 153-165