研究課題/領域番号 |
20310006
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
武田 重信 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (20334328)
|
研究分担者 |
小畑 元 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (90334309)
|
キーワード | 海洋科学 / 海洋生態 / 地球化学 / 環境変動 / 炭素循環 / 生物ケイ酸 / 珪藻 / 植物プランクトン |
研究概要 |
珪藻によって駆動される炭素とケイ素の循環に影響を及ぼす主要な環境要因が、海洋の現場においてどのように機能しているのかを明らかにするため、2011年7月に東部東シナ海において調査を行った。済州島南方海域の広範囲で、長江希釈水の影響を受けた低塩分・高硝酸塩濃度の表層水が認められたが、表層の溶存ケイ酸と硝酸塩の濃度分布の間には明確な違いがあった。前年度に同海域で観測されたような明瞭な珪藻ブルームは本航海中に見られなかったが、珪藻の増殖に起因すると考えられる溶存ケイ酸の枯渇域は、済州島の南西および南方の硝酸塩濃度が比較的高かった海域だけでなく、五島列島と済州島の間の黒潮系水の影響を強く受けた貧栄養海域でも認められ、陸棚縁辺域の鉛直混合に伴う栄養塩供給・珪藻増殖も東シナ海のケイ素循環に深く関わっていると考えられる。また、陸棚上の硝酸塩枯渇海域では、亜表層クロロフィル極大層が顕著に発達しており、そこでの植物プランクトン生産が下層への炭素輸送に大きく寄与していることが示唆された。 亜鉛は外洋域においてはケイ酸塩型の鉛直分布を示すことが知られており、海洋におけるケイ素循環の指標となる可能性がある。また、亜鉛は炭酸脱水酵素に含まれており、海洋植物プランクトンの炭素固定に密接に関わっている。この炭素とケイ素の循環に関与する亜鉛の循環過程を調べるため、西部北太平洋亜寒帯域および南北太平洋熱帯・亜熱帯域において海水試料を採取した。さらに、2010年度に採取した海水試料を分析し、西部北太平洋亜寒帯、オホーツク海、日本海における溶存亜鉛の分布を明らかにした。 オホーツク海と日本海においては、亜鉛は太平洋の分布と明らかに異なる分布を示した。特にケイ酸と比較した場合、中深層において亜鉛の顕著な濃度上昇が観測されたことから、縁辺海では陸棚堆積物からの供給などケイ酸と異なる循環過程が存在すると考えられる。
|