最終年度は、前年度までに開発したサンプリング・解析手法に基づいて、各種テスト・ダストについての粒径別データを追加した。その結果、個別粒子の全体積に占める水溶性物質の体積割合(ε)は、球相当径の2~8μmの範囲で、アリゾナテストダストでは粒径が大きくなるにつれて10から30%へと増加したのに対し、黄砂標準粒子(CJ1:20%弱・CJ2:30%弱)では粒径による違いがほとんど見られないことがわかった。また、前年度までの解析例に加えて、10年春と11年春の黄砂時に採取したダスト粒子についての解析例を増やした。その結果、これら日本での黄砂ダストのεは、発生源での付着割合と比べて、ほとんどの場合にほぼ同じ(1~3割)であったが、時折、粒径が大きくなるにつれて粒径別のεが大きくなるケースが見つかった。この原因として、発生源からの輸送途中で、海塩粒子などの水溶性物質を含む粒子と混合したか、あるいは、水溶性の人為起源物質による変質を受け、ダスト粒子上の水溶性物質の体積が増したことが考えられる。本研究のみではその原因やプロセスについての考察は難しいが、このような事例を示すことができたことは、氷晶核あるいは雲核としての黄砂ダストの機能を考える上で重要であろう(担当:長田)。 連続流型熱拡散チェンバに導入する空気の露点温度が、チェンバ内の水蒸気の飽和比に及ぼす影響について、熱流体解析ソフトウェアを用いた検討を行った。その結果、条件によっては、チェンバ内の氷膜を形成する領域における飽和比が大きく上昇する可能性が示され、氷晶核能力の定量的な解析において考慮すべき因子であることが示唆された。また、平成23年度の繰越期間に、熱拡散チェンバと光学式粒子カウンタを用いた試験的な大気測定を実施した。ただし、取得したデータの妥当性は検討すべき点として残された。(担当:持田)
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