研究概要 |
懸濁物質、光と一次生産の関係を定量的に把握するために、5月に長崎大学練習船鶴洋丸を用いて、大潮・小潮時の観測を行なった。またこれまでに取得したデータをまとめることによって、以下のことを明らかとした。外洋域での1日の鉛直積分PP(IPP)の推定用に開発された衛星による基礎生産推定モデルである鉛直基準化基礎生産モデル(VGPM)(Behrenfeld and Falkowski, 1997,以降BF)を有明海の現場PPデータで評価した。そしてこのモデルを、濁った沿岸水でも利用できるように改良した。VGPMでのIPPは、現場のChl-aと水温を利用して計算すると、有意に過大評価し(x1-3)、変動の52%しか説明できなかった。これは、有光層(Zeu)とその中での単位Chl-aあたりの生産の最大値(PBopt)が、BFで利用されているモデルでは過大評価され、相関もよくなかったことによった。これらに現場値を与えることで、IPPの変動の84%が説明でき、過大評価も少なく(x1-1.5)なった。PBoptは水温やChl-aでは予測ができなかった。そこで、潜在的光学特性(全吸収と散乱)を半解析アルゴリズム(QAA)を用いて、現場のリモートセンシング反射率(Rrs)から求めることによってZeuの推定値を向上することができた。さらに標準のアルゴリズムではなく、濁った環境に適したアルゴリズムをこの海域に最適化して使うことによってChl-aの推定値も向上した。QAAによるZeuと、定数(中間値)を使ったPBopt、そして最適化したChl-aアルゴリズムを使うことによって、モデル化したIPPは、変動の86%を説明し、過大評価もなくなった。さらにFRRFの1回の瞬時測定値での検証でも同様な結果が得られた。
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