研究概要 |
懸念の高い化学物質の広域での多地点に亘る面的な汚染実態の同時把握を可能とするため、複雑なマトリクスを含む環境水の化学分析や毒性試験における固相抽出方法による前処理方法の具体的な条件を検討した。また、固相抽出により精製・濃縮された試料について、数百種類に及ぶ懸念物質を同時に測定するために、毎回の検量線の作成を必要としないGCMS包括一斉分析法を適用するため、化管法対象物質のGCMSにおけるリテンションタイムと質量スペクトルおよび標準検量線データ(GCMS情報)のデータベース登録の可否を検討した。また、神奈川県内の河川水を主な研究対象とし,一部、上流域の山梨県や隣接する東京都の河川水も対象とした。各採水地点において数リットル程度の試料水をサンプリングし,固相抽出濃縮による前処理操作を施した後,GC/MS等による化学分析と同時に,藻類やミジンコ,ヒメダカによる水生生物毒性試験を実施した。 化管法対象562物質のうち、GCMSで包括一斉分析が可能な物質は280物質あることを確かめ、既存のDBに収録済の199物質のほかに新たに81物質のGCMS情報のDBを追加できた。また、ミジンコ類と藻類を用いた毒性試験による採水域の河川水および下水処理水の毒性水質データの蓄積を図った。また,懸念物質の大量排出が懸念される発生源として、下水処理場からの放流水が河川に対して大きな排出源となりうることをPRTRデータのモデル解析により明らかにし、放流後の河川でのリスク計算事例を作成した。 また、東アジアの研究者らが現地国で行う水質調査や毒性試験結果についての情報交換を行い、環境水中で懸念される化学物質とその毒性の管理に関する情報の収集整備や管理への活用の課題を抽出した。
|