研究課題
前年度までにGC/MS包括一斉分析DBへの追加収録の可能性が示された81物質について、質量スペクトルデータの精査および標準検量線の作成・収録を行うとともに、環境水試料の固相抽出法による前処理条件について検討し、標準添加回収率やその変動幅、適用範囲を明らかにした。また、関東近郊の公共河川域の環境測定点や公共下水処理場などにおいて、季節を変えて2回~4回にわたり採水した試料水を固相抽出濃縮を施した後、GC/MS等による化学分析と同時に藻類やミジンコ、ヒメダカによる水生生物毒性試験を実施して、有害物質の検出頻度や検出レベル、検出時期、検出地点などを比較評価した。その結果、河川水では、生態毒性物質を含む農薬が高い頻度で検出され、毒性発現の主要な物質となりうる場合があることが示された。下水流入水では工業化学品が主に検出され、数百μg/Lの界面活性剤を除き、濃度レベルは1μg/L以下、半数致死濃度EC50レベルは1mg/L以上の低毒性の物質がほとんどで、下水の毒性は同定ができていない分解物によるものが大きいことが示唆された。藻類や甲殻類での毒性試験結果と個別物質のハザード比の総和ΣHQとの間に線形相関は見られないが、毒性試験での「毒性あり/なし」とΣHQでみた「懸念あり/なし」の関係は約85%の地点で一致した。これらの知見より、PRTR排出量情報により、地域ごとの環境汚染の実態を想定し、手間のかからない包括一斉分析により汚染実態をモニタリング把握することで、環境水の毒性の推定が行え、リスクベースでの管理が可能となることが示された。化学物質使用が急激に拡大している中国の関連研究者に対し、これらの包括一斉分析技術を紹介して同様の分析機器の整備を進めてもらい、毒性物質のリスク管理に関する環境情報基盤の共有を開始することができた。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
Water Science, Technology
巻: Vol.63 ページ: 410-415
Journal of Water and Environment Technology
巻: Vol.8 ページ: 223-230