研究概要 |
船底防汚剤(銅ピリチオン、亜鉛ピリチオン、シーナイン211などの有機防汚剤)および船舶ディーゼル排ガス中の有害成分(多環芳香族炭化水素、ニトロ化多環芳香族炭化水素)に着目し、海事活動の盛んな港湾における底質の汚染を定量的に評価し、未知の有害成分を探索することを目的として以下の課題に取り組んだ。 1.港湾底質および塗料廃棄物の生態毒性評価:今まで実施してきた海産発光細菌試験、変異原試験に加えて、海産底生珪藻Cylindrotheca chlosteriumを供試底質に直接接触させ、水中の藻類量をin vivo chlorophyll量として測定する、底質の汚染評価試験法を開発した。標準物質である銅ピリチオン(CuPT2)の毒性は、他のプランクトン性微細藻類への毒性とほぼ同等であった。2010年に大阪湾の10か所で採取した乾燥底質の底生藻類への毒性(72-h EC50)は0.14~1.8g/lであった。これに対して、同一試料の海産発光細菌への毒性は0.009~0.17g/Lであったので、発光細菌試験の方が10倍程度感度が高いと言えたが、両試験結果には強い相関が認められなかったことから、それぞれ試験で検出できる化学物質が異なると考えられた。 2.港湾底質および塗料廃棄物中の化学物質の残留:防汚剤CuPT2に着目し、親化合物と分解産物(PT2,PS2,HPT,HPS,PSA,PO)にEDTAとPS2を添加して誘導体PPMDを生成させ、HPLCにより濃度を定量する方法を開発した。この誘導体反応によるPPMDは、ピリチオン(PT)1分子に対して化学量論的に生成することを見出した。有害性の高いCuPT2、PT2,HPTの定量限界(IQL)を算出したところ、いずれも約1.0μg/lであった。本法を用いて、大阪湾底質5種類をジクロロメタン抽出し、フロリジルカラム処理したところ、CuT2の最高濃度は2.6μg/lであり、文献にあるLCMSMSによる定量限界値と同等の濃度で検出された。
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