研究課題
伊勢湾の4河川(鈴鹿川、田中川、櫛田川、宮川)の河口干潟の植生及び底生動物の調査と環境調査を行い、各調査地における植生の形成要因について明らかにした。鈴鹿川干潟は河口から1.2kmに位置する左岸側で、田中川干潟は河口近傍の潟干潟で、櫛田川干潟は河口から1km〜河口近傍に位置する右岸側で、宮川干潟は、河口から約6kmに位置する右岸側と中州干潟を対象に調査を実施した。各干潟を通した出現種は、紐形動物1種、環形動物3種、軟体動物15種、節足動物12および棘皮動物1種の動物合計32種と緑藻、珪藻および紅藻各1種の植物合計3種である。干潟別の種類数は、14〜22種の範囲にあり、鈴鹿川干潟と櫛田川干潟で少なく、田中川干潟(潟干潟)で多い傾向となっている。各干潟で共通して出現した種は、貧毛類のイソミミズ、二枚貝類のクチバガイ、イソシジミとなっている。平均個体数をみると、136〜342個体/m2の範囲にあり、田中川の潟干潟では出現個体数は多い傾向にあるものの、河口干潟の平均出現個体数を比較すると、鈴鹿川干潟<宮川干潟<櫛田川干潟の順になる。干潟としての評価【鈴鹿川】満潮時に冠水しにくい砂地が大部分を占め、そこには外来植物のシナダレスズメガヤ、オオオナモミが群生しており、特に、シナダレスズメガヤは、河原の草原化を加速化し、他の河原固有植物の生育を抑制することから、現在の干潟環境は良好な環境ではないと考えられる。【田中川】満潮時に冠水し、土砂堆積・浸食の影響を受けやすい立地に群生するハママツナ群落等、受けにくい立地に群生するヨシ群落、砂地における海岸植物群落に分かれ、外来植物が少なく、良好な干潟環境を形成していると考えられる。【櫛田川】調査地は、一年生植物であるハママツナ、ハマヨモギが群生する撹乱を受けやすい環境と、アイアシ群落の塩性湿地植物群落、海岸植物群落などの冠水を受けにくい安定した環境がある。冠水を受けにくい環境では、一部セイタカアワダチソウ群落等の外来植物群落が確認されており、今後、台風、流木等の撹乱によりパッチ状の裸地が形成されると、そこにセイタカアワダチソウ等の外来・陸生植物が侵入して、分布を拡大するおそれがある。【宮川】調査地は、全体の70%以上が一年生植物の塩性湿地植物群落を形成しており、上流からの土砂供給による撹乱を受けやすい環境と判断し、本来の干潟環境に近いと考えられる。また、一部、セイタカアワダチソウ・ススキ群落等が形成している環境もあるが、撹乱の激しい環境であるため、今後、変化する可能性もあるため、継続的にみていく必要がある。
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環境アセスメント学会誌(J. Jpn. Soc. Impact Assess.), 7(1), 55-61 7
ページ: 55-61
Verh. Internat. Verein. Limnol. 30
ページ: 907-910