研究課題/領域番号 |
20310022
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
池田 浩明 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 上席研究員 (50343827)
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研究分担者 |
石坂 真澄 独立行政法人農業環境技術研究所, 有機化学物質研究領域, 主任研究員 (60354007)
稲生 圭哉 独立行政法人農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 主任研究員 (70391208)
山中 武彦 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 主任研究員 (50354121)
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キーワード | 生態系影響評価 / 生態系管理 / 農薬 / 順応的管理 / モニタリング / 水稲用除草剤 / 農業水路 / 沈水植物 |
研究概要 |
農薬の生態影響を事前に予測するのは困難であることが指摘されている。そこで本研究は、野外において生物と農薬の多地点モニタリング調査を実施し、モニタリングデータに基づく農薬の生態影響の特定手法と農薬動態の流域モデルを組み合わせることで、農薬の順応的管理を可能にする支援ツールを開発する。 本年度は、茨城県桜川・西谷田川流域の農業水路にモニタリング調査区(7地点)を設定し、水生植物と除草剤濃度の季節変動を調査・分析した。各調査水路には、沈水植物のエビモ、オオカナダモ、コカナダモ、セキショウモと抽水植物のガマ、ヨシがそれぞれ優占していた。主要な水稲用除草剤であるスルホニルウレア系除草剤の濃度は、全ての調査水路で5月中旬にピークを示し、6月中旬にはほぼ検出限界濃度まで低下した。水生植物のうち、除草剤濃度のピーク期に顕著な影響が見られたのは沈水植物であり、エビモが最も大きな阻害を受け、5月に一時的に消滅したが、その後11月に再出現した。一方、抽水植物はほとんど影響を受けなかった。この結果を受けて、エビモを指標植物として選定した。 次に、エビモを試験植物とする農薬影響の特定法を確立するため、アリノトウグサ科の沈水植物を試験植物とする標準試験法に改良を加え、殖芽の殺菌・休眠解除(35℃、3日間)、発芽した芽の切断、馴化(15/10℃、12時間明期)、除草剤暴露試験(2週間)という手順で試験が可能であることを明らかにした。 さらに、農薬動態の流域モデルを構築するため、桜川の本川や支川の流路および流域内の水田面積について、国土数値情報を基にGISを用いて解析した。 本年度に発見された除草剤の施用直後における農業水路の植物の顕著な個体群減少とその後の冬季における再生は、これまで報告されたことがなかった新知見であり、野外モニタリングデータに基づく農薬の順応的管理の実現可能性と有効性を示唆する。
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