研究概要 |
平成20年度~21年度に開発を行なった極低バックグラウンド核分光法によるU, Th検出のための電子・X線・ガンマ線計測システムのうち、NaI(T1)シンチレータ検出器を用いたタイプについて、^<232>Th系列に対する感度評価を行ない、検出限界10μBq/kgという良好な結果を得た。これは平成21年度に評価を行なった^<238>U系列に対する検出感度と同等の性能であり、試料中の含有濃度に換算してU0.8ppt, Th2.2pptという非常に高い感度が実現した。このことにより、本研究の最大の目標が達成された。 現在、プラスティックシンチレーション検出器を用いたシステムに関する感度評価を行なっており、まもなく最終結果が得られる見込みである。 また本システムを利用した研究の最初の試みとして、ガンマ線照射試料の放射化分析による光核反応断面積の測定を実施した。兵庫県立大学・高度産業科学技術研究所・ニュースバル放射光施設で提供される高輝度ガンマ線ビームを高純度炭素標的およびモリブデン標的に照射し、照射後の試料からのβ線、γ線を本システムによって分析することにより、^<12>C、^<92>Mo、^<94>Mo、^<96>Mo、^<97>Mo、^<100>Moの光核反応断面積の測定に成功した。これらは、単色エネルギーのガンマ線と放射化法を組み合わせた実験としては世界初の成果である。これらの結果を踏まえ、今後、中性子放射化分析による中性子捕獲断面積測定、隕石試料中の微量放射能分析等への応用を計画している。
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