研究概要 |
放射線被ばくによるヒトの遺伝リスクはその大半を、特定遺伝子座を用いたマウス研究に依存している。しかし、メスマウスの未成熟卵母細胞は極端に放射線に弱く死滅してしまうため、照射実験が成り立たない。本研究では、放射線照射したメス親未成熟卵母細胞に由来するF1ラットを用いてヒト女性の放射線被ばくによる遺伝リスクの解明を目指した。DNA2次元電気泳動法とマイクロアレイCGH法の2つの技法を用いた。 DNA2次元電気泳動法:照射群、対照群各々750匹のF1ラットを用い、1匹のF1について2種類のゲルを作製した。合計3,000枚のゲル画像解析を行い、照射群で17個、対照群で35個、合計52個の突然変異を検出した。分子解析の結果、これらの突然変異の多くは(照射群14個、対照群33個)マイクロサテライト反復配列数の増減による小さな変異で、放射線とは無関係のものであり、放射線被ばくによる影響は認められなかった。ラット未成熟卵母細胞では自然突然変異率および放射線誘発突然変異率ともにオスマウスの精原細胞に比べかなり低いことが示唆される。(投稿準備中) マイクロアレイCGH法:高密度マイクロアレイCGH法ではゲノム全般にわたり1~2kb間隔で遺伝子コピー数を調べることができる。既知の遺伝子欠失モデルを用いてCGH実験法の改良と"R"を用いた機能的解析法を確立した。マイクロアレイCGH法は突然変異検索に適していると判明したので、平成22年度から照射群・対照群F1それぞれ200匹について、1枚のスライドに同じ140万プローブが3組貼られた高密度の3x1.4Mアレイ(1枚のスライドで3組のDNAについて実験ができる)を用いて、現在までに照射群・対照群各150匹、合計300匹のCGH実験とその解析を行った。
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