研究課題
本研究の目的は、ビスフェノールA(BPA)曝露した2〜3歳の力ニクイザル脳の解析により、次世代オスの性同一性障害に類似した行動異常の発生メカニズムを明らかにすること。また、母体にメチマゾールを曝露したカニクイザル胎仔脳を解析することにより脳発達障害の機序とその影響評価を行うことである。BPAの系では、胎仔期にBPA曝露した2.5〜3.5歳の個体群の脳のホルマリン固定サンプルを用いた。プロテオーム解析を用いて、健常カニクイザル個体の脳(視床下部)で、雌雄に性的な変化が確認できるかどうかを検討したところ、雌雄で差のあるペプチドを確認することができた。雌雄の比較ができる系が確立されたので、次に、BPA投与実験群の視床下部のプロテオーム解析を行い、健常群で得られたデータと比較することでBPA曝露による発現タンパク質の変化の有無、特に性差に関係しているか(雄の雌化など)について検討した。その結果、脳の性分化に関わるような夕ーゲットタンパク質候補として、N-ethylmaleimide sensitive factor(NSF)が得られた。このタンパク質について組織切片上で検索したが、明確な差はみられなかった。メチマゾールの系では、5つの異なる妊娠ステージで短期間投与した胎仔脳の組織学的解析を行った。その結果、神経機能成熟期であるE100以降(小脳はE130以降)において、大脳皮質の神経細胞樹状突起、および小脳プルキンエ細胞樹状突起の未発達が認められたことから、胎仔期における甲状腺ホルモンの欠乏は組織発達より機能発達に影響することが示唆された。さらに、E150のメチマゾール投与群および文寸照群の前頭葉大脳皮質と小脳皮質のプロテオーム解析を行い、メチマゾール曝露の影響を受けたタンパク質発現の特性を調べたところ、14-3-3γタンパク質が、投与群での発現量が対照群に比べて半分以下であった。El50の大脳および小脳の切片で、14-3-3γ抗体を用いた免疫染色を行ったが、差はみられなかった。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
American Journal of Primatology 71(in press)
Psychoneuroendocrinology PMID: 19345509 (in press)
Brain Medical 21(印刷中)