研究課題/領域番号 |
20310036
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
伏木 信次 京都府立医科大学, 医学研究科, 教授 (80150572)
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研究分担者 |
伊東 恭子 京都府立医科大学, 医学研究科, 准教授 (80243301)
矢追 毅 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (40311914)
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キーワード | 内分泌かく乱物質 / ビスフェノールA / エピジェネティックス |
研究概要 |
ビスフェノールA(BPA)への母体を介した曝露は大脳新皮質の神経細胞分化・移動に対して促進的に作用し、さらに皮質構築や皮質視床投射の異常をもたらす。今回はその分子基盤を解明すべく脳内DNAメチル化に着目し、ゲノムワイドでメチル化パターンを解析し得るRestriction Landmark Genomic Scanning(RLGS)法を適用して解析した。BPA曝露群と対照群のそれぞれ異なる胎齢(12.5日、14.5日)のマウス前脳からゲノムDNAを抽出しRLGS法に供した。対応するスポットの濃度を比較し、BPA曝露群と対照群間で変化のあるものを抽出した。その結果、総計2500スポットのうちBPA曝露群と対照群間で変動したスポットは48個(1.9%)で、うち22個(0.9%)と18個(0.7%)が各胎齢においてBPA曝露影響としての変動を示した。48個の中8個(0.3%)は両日ともで変動した。BPA曝露により変動したスポット45個の中で30個は発生段階特異的変動を示すスポットであったので、BPA曝露は発生段階特異的な遺伝子を高率に標的とする可能性が示された。スポットからクローニングを行い塩基配列同定に成功した13個のうち12個のNotI切断端は機能的遺伝子の転写単位5'端に隣接したCpG Islands(CGI)の中に位置した。その中の二つの遺伝子(Vps52,LOC72325)に関して定量的RT-PCR法により調べたところ、BPA曝露によって両者とも発現が亢進していた。この二つの遺伝子のスポット上での変化は濃度増加、すなわちDNAメチル化の減少であり、遺伝子発現亢進と対応するものであった。このような解析によって妊娠中の母体へのBPA曝露がマウス胎仔前脳のエピゲノムに多様な変化を与えること、すなわち複数の遺伝子のプロモーターに連関したCGIでのメチル化の増加ならびに減少をもたらすことを明らかにした。
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