研究課題
Tris(1,3-dichloro-2-propyl)phosphate(以下TDCPP)やTris(2-chloroethyl) phosphate (以下TCEP)などの塩素を含む有機リン酸トリエステル類は、難分解性で蓄積性があり、種々の毒性を有する。我々が世界で初めて単離に成功した含塩素有機リン酸トリエステル類の分解菌Sphingomonas sp.TDK1とSphingob ium sp.TCM1に存在する新規分解酵素を単離・精製し、その特徴を明らかにするとともに当該酵素遺伝子を取得し、解析を行うことが本研究の目的である。平成20年度は以下の研究実績をあげた。1. Sphingomonas sp. TDK1株の無細胞抽出液から、各種クロマトグラフィーを用いてTDCPP分解酵素を均一に単離・精製した。本酵素は分子質量が約59.6kDaの単量体の酵素であること、本酵素はTDCPPの3つのエステル結合のうち一つのエステル結合だけを加水分解する新規トリエステラーゼであること、本酵素は亜鉛を含む金属酵素であることを明らかにした。また、至適pH、至適温度、基質特異性、キネティックパラメーターなども明らかにした。2. Sphingobium sp. TCM1株の無細胞抽出液から、各種クロマトグラフィーを用いてTCEP分解酵素を均一に単離・精製した。本酵素は分子質量が約58.4kDaの単量体の酵素であること、本酵素はTCEPの3つのエステル結合のうち一つのエステル結合だけを加水分解する新規トリエステラーゼであること、亜鉛を含む金属酵素であることを明らかにした。また、至適pH、至適温度、基質特異性なども明らかにした。キネティックパラメーターは現在検討中である。3. 上記2種類の精製酵素のN末端アミノ酸配列の解析を試みた結果、両酵素とも、N末端は何らかの修飾を受けていることが示唆された。現在、両酵素の内部アミノ酸配列解析が進行中である。
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J. Biosci. Bioeng. 106
ページ: 27-32