研究概要 |
これまでに我々は,常温で化学分解が困難とされていた焼却灰中のダイオキシン分解において,常温微加圧(0.1MPa程度)下,還元剤に金属カルシウムを用い,かつ,水素活性化触媒を共存させた湿式処理によって,初期濃度7,800pgTEQ/g-ashのダイオキシンを99%以上の高効率で分解する新手法を見出した。粉末X線回折法による処理物の分析結果から,処理前に存在したヘマタイト(α-Fe_2O_3)成分が処理後完全に消失したことを明らかにした。この実験事実は,飛灰中のヘマタイト欠損部位へのアルコール浸透によるDXNs溶出促進の可能性を示唆しているが,その一連の溶出・分解プロセスは未だ不明な点が多い。そこで我々は,この特異な現象を解明するために,初年度に焼却飛灰の酸化被膜モデルを用いて溶出プロセスの解明を行い,次年度では,ポリクロロジベンゾ-p-ジオキシン類(PCDDs),ポリクロロジベンゾフラン類(PCDFs),及びコプラナーポリクロロビフェニル類(co-PCBs)の脱塩素反応に与える諸因子の影響を明らかにした。 最終年度では,最適条件下,実試料を用いてダイオキシン類の無害化試験を行った。その結果,目標の処理濃度「2pgTEQ/g-ash以下」を達成し,また,PCBs類については溶出試験で検出下限値以下まで無害化することに成功した。さらに,本技術の応用展開例として,バイオマス資源として期待されているリグニン誘導体の芳香環部分を接触水素化し,収率良く対応する脂肪族化合物へ変換することに成功した。得られた脂肪族化合物は,ポリマーへの増量剤としても期待できることを明らかにした。
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