エネルギー資源である石炭、未利用資源である廃棄物、およびカーボン・ニュートラルで再生可能な資源であるバイオマスなどには、土砂や粘土鉱物などの主要鉱物に加え、砒素、ホウ素、カドミウム、鉛、水銀、モリブデン、セレンなどの有害金属をppmレベルで含んでいる。発電や熱利用プロセスにおいて、原料の高温反応・分解時に、燃料中に含まれるトレースエレメントの大気放出に伴う環境影響、生態や健康障害が、近年、問題になりつつある。 本研究では、これらの燃料から発生する蒸気状有害元素ならびにそれらを冷却したときに生成する気相析出型微粒子(PMI)の低減機構に関する研究を3年間で実施する。 1.38個の塩素系の素反応式を選び、CHEMKINを使用して、化学種の濃度変化を計算した実験結果との比較の中で、高温場で発生した塩素ラジカルがガス冷却過程において、ラジカル同士の再結合によって塩素ガスが発生し、水蒸気との反応によって塩化水素ガスに変化することを明らかにした。また、塩化水素と塩素ガスとの生成比率は、水蒸気濃度およびガスの冷却速度に支配されることを明らかにした。 2.名古屋大学情報連携基盤センターのスーパーコンピュータ用にチューニングされた非経験的分子軌道法(Gaussian)ソフトウエアを利用して、Pb、Cu、Zn系の素反応式の反応速度式を10個決定した。 3.Pb-Cu-Zn-02-HC1-H20-N2-C02系のモデル物質について、回分式ロータリーキルン反応装置に入れて600〜1100℃の温度で反応実験を行い、生成する気相析出型微粒子の粒子径状や化合物形態、結晶径などを明らかにした。その結果、析出の核となる元素、およびその核の周りに析出する元素とが、SEM-EDS分析で確認された。また、原子吸光分析装置やイオンクロマトグラフィーなどを使用して、生成物の物質収支を高い精度で求めた。
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