研究概要 |
エネルギー資源である石炭、未利用資源である廃棄物、およびカーボン・ニュートラルで再生可能な資源であるバイオマスなどには、土砂や粘土鉱物などの主要鉱物に加え、砒素、ホウ素、カドミウム、鉛、水銀、モリブデン、セレンなどの有害金属をppmレベルで含んでいる。発電や熱利用プロセスにおいて、原料の高温反応・分解時に、燃料中に含まれるトレースエレメントの大気放出に伴う環境影響、生態や健康障害が、近年、問題になりつつある。本研究では、これらの燃料から発生する蒸気状有害元素ならびにそれらを冷却したときに生成する気相析出型微粒子(PM1)の低減機構に関する研究を3年間で実施する。 本年度の成果として、 1.塩化揮発した重金属蒸気が冷却過程において気相析出する化学種の形態測定、およびその反応機構を明らかにした。石英ガラス製ロータリキルン型反応装置を使用して、Pb、Zn,Cu,Cdを含むモデル試料を燃焼温度900~1050℃で塩化揮発化し、発生した金属蒸気を、ガス冷却装置を模擬した900~300℃に温度勾配をつけた3段の円筒濾紙型捕集装置で捕集され、その生成量と化合物形態がSEM-EDS、XRF、XRD、イオンクロマトグラフィーなどの分析装置を使用して同定した。重金属類の析出は、温度の高い方から硫酸鉛、塩化鉛、硫酸銅/硫酸亜鉛、塩化銅/塩化亜鉛の順であり、硫酸鉛が析出すると他の金属蒸気が硫酸塩を核にして不均一核生成によって析出すること、また、水蒸気や硫黄/塩素比などの影響について明らかにした。 2.ab-initio量子化学計算法を利用してPb/O/Cl系の6本の素反応速度式の活性化エネルギーと頻度因子を決定した。確定した反応速度式を利用して、反応シミュレーションを行ったところ、実験結果とほぼ傾向が一致し、本データの信頼性は高いと判断された。
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