研究概要 |
本研究の目的は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を基に独自開発したBias nc-AFM/S法を発展させ、探針と試料を極接近させたときに試料表面上の特異的原子・分子と探針先端原子との間で進行する結合形成の過程・電子状態の変化を明らかにすることである。 1. Bias nc-AFM/Sを基本とした電流・エネルギー散逸等の高感度同時計測システムの構築:試料表面上を探針で走査して、nc-AFM像をとりつつ、探針を間欠的に止め、印加電圧を掃引し、(1)探針-試料間の相互作用引力、(2)探針-試料間に流れる電流、(3)エネルギー散逸、(4)トンネル障壁の印加電圧と探針-試料間距離に対する変化を高感度で同時測定する。各特性曲線は1枚のnc-AFM像に対して256、512、1024本から選択される。(1)相互作用力-印加電圧曲線から静電引力成分を引き、特異的な近距離引力成分を分離するソフトウェアを開発した。各特性曲線の計測位置を表面の2次元周期性に対応させ、表面単位ユニットにデータを集約させる解析ソフトを構築した。 2. ナノピラー成長技術に基づく探針調製:超高真空AFMを利用して、加熱清浄化したSi探針先端を高温Si基板にソフトに制御性よく接触させ、その後ゆっくりと引き上げることによってSi探針先端にSi単結晶ナノピラーを成長させる技術を開拓してきた。この清浄なSiナノピラーに水素ラジカル、および、アンモニアガスを暴露し、Siナノピラー探針の水素終端、アミノ化を試みた。 3. 半導体系試料の調製と測定:表面にダングリングボンドをもつ半導体(p,n型)Si(111)清浄表面を試料とし、(p型)Si探針を用いて、各特性曲線を取得した。n型試料では明確な近距離結合力に起因するスペクトルが観察されたが、p型試料では、観察されなかった。電子状態の差異に関して考察している。
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