研究概要 |
本研究では、主として波長365nmの紫外光の励起によって赤色に発光するYVO_4: Bi^<3+>, Eu^<3+>ナノ粒子をPMMAビーズに複合化させ、蛍光ビーズを作製することを検討した。複合化させる手段として、異符号に帯電している高分子とナノ粒子との間の静電的相互作用を利用した交互吸着法を選択した。負に帯電した10μm PMMAビーズに対し、正に帯電した高分子poly (allylamine hydrochloride) (PAH)と負に帯電したYVO_4: Bi^<3+>, Eu^<3+>ナノ粒子(凍結乾燥および600℃焼成試料)を交互に吸着させ、それぞれ複合ビーズPMMA_PAH/YVO_4およびPMMA_PAH/YVO_4(焼成)を作製した。また、PAHと負に帯電した高分子poly (sodium 4-styrenesulfonate) (PSS)を交互に各4層ずつ積層し、再びPAHを吸着させた後、YVO_4: Bi^<3+>, Eu^<3+>ナノ粒子を加えてPMMA_(PAH/PSS)_4/PAH/YVO_4を作製した。PMMAビーズとPMMA_PAH/YVO_4複合ビーズのSEM画像から、ビーズ表面へのYVO_4: Bi^<3+>, Eu^<3+>ナノ粒子の吸着を確認した。また、蛍光顕微鏡画像より、焼成前の凍結乾燥ナノ粒子を用いたビーズよりも焼成ナノ粒子を用いたビーズの方が強い蛍光を示した。これは焼成により蛍光強度が増加しただけでなく、ビーズ表面に吸着した粒子量が増加したためと考えられる。一方、PMMA_(PAH/PSS)_4/PAH/YVO_4においてもナノ粒子の吸着が確認され、PAH単層被覆のビーズよりも強い蛍光が観測された。これは、高分子の被覆を繰り返すことによってビーズ表面の凹凸の増大に伴いナノ粒子吸着サイトが増加し、吸着量が増加したためであると推察される。以上より、交互吸着法によってYVO_4: Bi^<3+>, Eu^<3+>ナノ粒子をPMMAビーズに複合化させることが示された。このようなビーズは蛍光標識ビーズとして生体分子の認識へ応用できるものと期待される。
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