研究概要 |
内径0.73nmの一次元細孔を有する多孔質結晶AlPO_4-5の100μm程度の単結晶を容器として利用し,半導体量子細線や有機半導体分子に一次元配列系を互いに平行かつ高密度に安定化させる。その異方的電状態や構造を顕微分光技術を駆使した近赤~紫外・軟X線領域光電子スペクトルやX線回折・NMRによる平均構造と局所構造により議論する。これらに対し,本年度は下記内容を主として明らかにした。 1.高感度顕微分光装置の開発と実用化 実測定において必要となる基本装置性能評価を透過および反射スペクトル光学系に対して行った。透過スペクトルでは,空間分解能15μmで波長領域215-2300nmにて測定感度が吸光度換算で3以上あり,また偏光に対する消光比が100:1以上あり,市販装置の性能と同等かそれ以上を実現した。一方,軟X線を用いた顕微鏡装置では,スペクトル測定よりも,むしろ像観察法に開発に重きを置いたため,結果として対象試料の観察まで到達できなかった。 2.AlPO_4-5単結晶中のSe一次元鎖の偏光透過スペクトル 波長2000nmまでの測定により,Se鎖は量子閉じ込め効果が無視できる十分な長さを有していることを見いだした。 3.アントラセン分子一次元配列体の電子状態と配列構造 AlPO_4-5を始めとする種々の一次元ナノ細孔を有するゼオライトへのアントラセンの導入を行い,その電子状態や配列等を議論した。アントラセンの光スペクトルには分子の配列状態に関する情報の他,ゼオライト固有の陽イオンとの電子授受が生じうることを突き止め,今後のゼオライトを利用した無機有機ハイブリッド型材料開発指針を得た。 4.AlPO_4-5結晶の結晶構造変化と形態制御 100μm超の単結晶合成の成功に留まらず,AlPO_4-5はその合成過程において,結晶構造変化(ナノシート)やマクロ形態のダイナミックな変化(ディスク)などを発見し,その制御に成功した。
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