研究分担者 |
武田 元博 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (10333808)
櫻井 遊 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (80451574)
河合 賢朗 東北大学, 病院, 医員 (80513530)
粕谷 厚生 東北大学, 国際高等研究教育機構, 客員教授 (10005986)
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研究概要 |
抗がん剤内包高分子ミセルは, 今後のがん治療において有望な腫瘍滞留性ナノ粒子の一つである. 現在, 各種抗がん剤を内包させた高分子ミセルが臨床試験中であるがその効果は完全ではなく, 詳細な腫瘍内および体内動態は明らかにされていない。従って今後標的細胞への特異性の高い高分子ミセルの設計は最も重要な課題である. 我々は, これまで蛍光ナノ粒子を1粒子レベルで生体内を観察する技術を確立してきた。さらに蛍光標識した高分子ミセルを作成し, 独自に開発した一分子DDSイメージング技術を用いて, ミセルの腫瘍細胞内外での動態を生体内で観察することでDDSの問題点を明らかにし, より効果的なナノ粒子の設計を行うことを研究の目的としている. 平成20年度は, 高分子ミセルの蛍光標識化および蛍光ナノ粒子のシリカコーティングを行った. 高分子ミセルの生体内での挙動を可視化するには, 高分子ミセルを蛍光物質でラベルする必要がある. 我々は, 高分子ミセル1粒子の長時間観察を可能にするために, 退色しにくい蛍光物質である量子ドットを高分子ミセルに内包させる技術を確立した. また, 生体内1粒子イメージング時に, 1粒子が量子ドット単独ではなく, ミセルに内包された状態であることの確証を得るため, 高分子ミセルの構成単位であるブロック共重合体に量子ドットとは異なる波長の蛍光標識物質を結合させた. そして, 電子顕微鏡と共焦点顕微鏡を用いて, 直径が60nm前後で二つの異なる蛍光波長を兼ね備えた高分子ミセルが作成できたことを確認した. 今後, この高分子ミセルを担癌マウスに投与し, 高分子ミセルの腫瘍血管から腫瘍細胞への移動とミセル崩壊に至る過程を詳細に観察する予定である. またシリカコーティング蛍光ナノ粒子を用いてラットセンチネルリンパ節の蛍光検出に成功し、従来の蛍光ナノ粒子に比べ造影時間の延長を認めた。今後大型動物で造影時間延長効果を検証する予定である。
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