研究課題/領域番号 |
20310067
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大内 憲明 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90203710)
|
研究分担者 |
粕谷 厚生 東北大学, 国際高等研究教育機構, 客員教授 (10005986)
武田 元博 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (10333808)
甘利 正和 東北大学, 病院, 講師 (50400312)
河合 賢朗 東北大学, 大学院・医学系研究科, 客員准教授 (80513530)
|
キーワード | 高分子ミセル / ブロック共重合体 / パクリタキセル / 微小管 / 1粒子 / 蛍光イメージング |
研究概要 |
カプセルタイプのナノキャリアを媒介とする薬物は,新たながん治療製剤として期待されている。ナノキャリアの1つである高分子ミセルは、親水性-疎水性などの不均質な構造を持つブロック共重合体が、水中で自律的に会合したナノキャリアであり、内核と外殻の明確な二層構造を持つ。外殻により生体との相互作用を通して体内動態・分布を決定し、内核には薬物を物理的あるいは化学的に封入することができる。封入薬物として、抗がん剤パクリタキセル(微小管阻害剤)が代表的であり、近年はパクリタキセル内包高分子ミセルの1つであるNK105の臨床試験が進行している。 一方、パクリタキセル内包高分子ミセルの構造安定性や抗がん剤効果の評価は、多粒子系による細胞増殖効果の検討が主であり、粒子レベル・分子レベルでの理解は不十分であった。本研究では、独自の1粒子蛍光イメージング法で高分子ミセル製剤の機能性を検討するために、新たなブロック共重合体を合成し、この共重合体の親水部を近赤外波長を持つ蛍光色素で標識することにより、パクリタキセル内包蛍光高分子ミセルの合成を行った。この蛍光ミセルの構造安定性を1粒子レベルで評価した結果、ミセルは生理的環境下において、数日以上、構造的安定性を保つことが示された。さらに、パクリタキセル内包蛍光高分子ミセルが微小管に及ぼす影響をヒト乳がん培養細胞にて、分子レベルで検討した結果、同濃度のパクリタキセルに比べ、高分子ミセル製剤の方が微小管機能阻害効果がゆっくりであることが示された。以上の成果は、高分子ミセル製剤の薬効性を考える上で重要な情報であり、今後高分子ミセル製剤の分子設計を行う上で、本実験系が有用な評価系に成り得ることを示している。
|