ナノ加エスライドガラスを用いた細胞膜タンパク質間相互作用の一分子蛍光イメージング法を開発することが本研究の目的である。 従来の全反射エバネッセント照明法の限界は、蛍光分子濃度が50nM以上になると、高い背景光のために一分子蛍光を識別できないことである。一方、ゼロモード導波路を用いた場合では、1μM以上の蛍光分子濃度でも一分子観察可能であるが、ナノ開口部に細胞膜が落ち込むため、自然な細胞膜環境を阻害する。本研究では、この問題を解決するための新しい構造を提案する。 初年度である2008年度の計画は、(1)光学理論計算によるナノ構造形状の設計、(2)設計に基づくナノ加工スライドガラスの試作、および(3)試作したナノ加工スライドガラスを用いた一分子蛍光観察の実行可能性評価である。 (1)理論計算結果により、ナノ開口部の直径を100-200nmにすることで、蛍光分子濃度1μMでも一分子を識別できるだけ励起光を閉じ込められることを確認した。 (2)石英ガラス上のアルミニウム薄膜に配列形成したナノ開口部にテトラエトキシオルソシランを化学気相堆積法により埋め込むことで、細胞膜観察に適した構造を形成できることを示した。 (3)最初の試作品を用いて評価した結果、蛍光分子濃度500nMにおいて一分子蛍光観察できることを確認した。特に、ナノ開口側壁の形状が光の閉じ込めに影響することを見出した。 これらの結果は、提案する構造が、従来の全反射エバネッセント励起を用いた場合の濃度限界の10倍を達成していることを示している。
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