研究課題
細胞膜タンパク質間相互作用を一分子レベルで解析するためのナノ構造をスライドガラス上に形成し、その実行可能性を評価することが本研究の目的である。2009年度の目標は、2008年度に実施した近接場シミュレーション結果に基づいて、スライドガラス上にナノ導波路を形成するプロセスを構築すること、および、作製したナノ導波路から基板表面に染み出す近接場領域の体積を見積もり、どの程度まで蛍光標識分子の濃度を高濃度化できるかを調査することである。(1)細胞膜の自然な流動性を確保するためには、従来からの凹型のゼロモード導波路ではなく、平坦な表面を持つ導波路が必要となる。この導波路の簡便な作製プロセスを構築した。従来の凹型のゼロモード導波路を作製し、テトラエトキシシラン(TEOS)を化学気相蒸着法で1ミクロン厚まで堆積し、その後フッ素系反応ガスのプラズマでエッチングすることにより凹型の導波路内部を一様にガラスで充填することができ、さらにナノメートルオーダで平坦な表面を獲得することに成功した。(2)試作した平坦な表面をもつ導波路から染み出す励起光の近接場領域の体積を、導波路の直径ごとに評価した。はじめに、この導波路の表面に蛍光標識分子が1個だけ吸着した場合の蛍光強度(シグナル蛍光強度)を導波路の直径ごとに評価した。さらに、導波路表面への吸着を抑制しながら、一定の濃度の蛍光標識分子を溶液に分散させたときに、近接場領域から発せられる蛍光の強度(背景光強度)を導波路の直径ごとに評価した。これらの値から近接場領域体積とシグナル/バックグラウンド比を見積もったところ、直径100nmの導波路で1マイクロモル/リットルの濃度まで1分子蛍光観察ができることを見出した。
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