昨年度までに完成したナノ導波路を用いて、実際にタンパク質間相互作用を観察することにより、その実行可能性を評価した。本年度は、これまでに一分子観察の実績があり、水溶性タンパク質であるシャペロニンGroESとGroEL間の相互作用を、膜タンパク質観察用に改良した構造に固定してその相互作用を確かめ、その結果を構造形成にフィードバックすることを行った。さらに、並行して、細胞体、仮足、神経突起などの特定の細胞部位を、ナノ導波路の表面にアライメントして固定する技術も開発した。 GroES-GroEL間相互作用観察の結果、新構造では、従来のゼロモード導波路より近接場が広く染み出し、その結果、より微細で高アスペクトの形状に導波路を改良する必要が見出された。それでもなお、現時点で、500nMの濃度まで蛍光標識分子の濃度を高められることが判明した。従来のリアルタイム一分子蛍光イメージングでは、高々100nMの蛍光標識分子濃度で結合・解離のリアルタイム観察が行われてきているので、500nMまでの濃度で観察できることは従来法と比較して遜色なく、構造が平坦になっている分だけ膜タンパク質観察に適しているが、より高濃度下での一分子蛍光観察を実行できるように構造の改良が必要である。このために、ナノインプリント法を用いた導波路作成プロセスを新たに開発し、より微細な導波路を簡便かつ高スループットで作成できるかどうかを調査した。その結果、UVナノインプリント法のリフトオフプロセスにより、直径30nmの導波路を作成できる見込みを得た。一方、アミノ基、ポリエチレングリコール、アルキル鎖などを主鎖とするシランカップリング剤で導波路表面を位置選択的にパターニングすることにより、特定の細胞部位を位置選択的に導波路表面に固定できることが分かった。
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