研究課題
初年度に購入した光学シミュレータを用いて、ナノ導波路内に閉じ込められる近接場、ならびに、この近接場内にある1分子からの蛍光の伝搬を再現した。これにより、ナノ導波路上に配置したタンパク質1分子に照射される励起光強度と、この1分子からの蛍光が検出器まで伝搬する効率(検出効率)を算出した。1分子蛍光強度は、励起光強度、量子効率、および検出効率の積であるので、標識蛍光色素の量子効率が位置に依存せず一定であると仮定すれば、ナノ導波路上のタンパク質の位置に依存した一分子蛍光強度を算出できる。1分子蛍光イメージングによってリガンド-受容体間の相互作用を観察するためには、導波路上に受容体を固定し、蛍光標識したリガンドが受容体に結合した際に発する強いシグナル蛍光が、近接場内を拡散するリガンドからの背景光に対して十分に大きくなければならない。上記シミュレーションを実行すれば、このシグナル蛍光強度と背景光強度の両方を算出できる。単位時間あたりの近接場領域内の平均リガンド個数がポアソン分布で近似できることに着目すると、検出される蛍光の時間的揺らぎ(ノイズ)もポアソン分布で近似できる。ポアソン分布の平均(すなわち背景光強度)と分散(標準偏差の二乗、すなわちノイズ強度の二乗)が等しいことに着目すると、上記シミュレーションで求めたシグナル強度とノイズ強度の比、すなわちS/Nを求めることができる。ナノ導波路の形状に対応したS/Nをシミュレーション結果から求めたところ、蛍光標識分子をニアフィールド(近接場)でなくファーフィールドに配置することにより、従来の6倍のS/Nでリガンド-受容体間の結合と解離をリアルタイムに観察できることを発見した。この結果は、本研究で開発したナノ導波路が、リガンド-受容体間の結合・解離を1分子レベルでリアルタイムに観察する際の時間分解能を向上できることを意味している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Neurochemistry
巻: 123 ページ: 904-910
DOI:10.1111/jnc.12001
Probing Single-Molecule Enzymatic Dynamics of B-Glucosidase using Zero-Mode Waveguides
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