研究概要 |
マイクロ電極を用いる電解重合法によって,電解質溶液を含むアガロースゲルやフィブリングルなどの有機ハイドロゲルの表面へ導電性高分子のパターン印刷を可能にした.有機ゲルへは,インクジェットプリンタによる分散液塗布などの既存技術ではパターン印刷が困難である.本研究では,電極パターンを有する基板上に多孔質材料を置いた状態で電解重合を行い,材料表層に導電性高分子を成長させた後,酸化還元(ドープ・脱ドープ)による導電性高分子の体積変調を利用して電極から剥離させた.電解重合およびドープ・脱ドープは電気的に制御可能で,基板修飾や特別な装置を必要とせず,導電性高分子の性質のみを利用する全く新しい技術である. 通常,電解重合で作製した導電性高分子は電極と一体化しているため,剥離の際に柔らかいゲルが崩壊してしまうが,ドープ・脱ドープによる体積変化を利用する剥離法によって,ゲルや導電性高分子にダメージを与えずに電極から分離可能となった.そして,導電性高分子パターンの形状やサイズが,基板上の電極デザインを忠実に反映することを,アガロースゲル表面へのマイクロメートル精度の格子状パターンの形成で検証した.また,導電性高分子パターンを形成したアガロースフィルムを用いて,培養筋肉細胞の電気刺激を行った。その結果,筋肉細胞の伸縮運動が確認できたと同時に,電極としてのアガロースも細胞に同期して伸縮しているのが観察できた.
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