本研究では、酵素とポリリンなどカチオン性ポリマーの複合体を分子間架橋することによりマイクロチャネル表面に酵素を固定化する我々独自の技術を応用し、様々なポリエチレングリコール(PEG)化ポリマーと酵素の複合体を形成させ架橋することにより、酵素の活性を損なわずに安定性を高める酵素固定化技術の開発を行うとともに、酵素反応マイクロ化学プロセスの構築に応用する。今年度は、酵素固定化マイクロリアクター技術を用いて、ターゲットであるプロスタグランジン合成のためのタンデム反応技術の確立を行った。PEG化ポリマーもしくはポリリジンとグルタルアルデヒド・パラホルムアルデヒドを用いた酵素架橋凝集法によりシクロオキシゲナーゼおよび各プロスタグランジン合成酵素を固定化したマイクロリアクターを作製した。各酵素固定化マイクロリアクターは、架橋反応による失活は見られず、酵素活性を保持していた。また、溶液状態の酵素よりも優れた熱安定性を示し、室温での長期間の連続使用が可能であった。これらのマイクロリアクターをタンデムに連結してアラキドン酸の溶液を流通させ、反応を行ったところ、目的物である各種プロスタグランジンの生成を確認した。溶液状態の酵素を用いることによりマクロスケールで反応を行った場合は、2段階反応が困難であったが、このマイクロリアクターを用いた反応条件のさらなる最適化を進めることにより、目的物を純度よく生成させることに成功した。
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