研究課題
東日本大震災の影響で一時研究を中断したが、平成23年7月末まで延長が認められたのと、分担研究者の協力でフェムト秒レーザー(fsレーザー)を用いた細胞の制御に係る要素技術に関する本年度の目標を達成することができた。[具体的内容]1)細胞回路作成法検討:培養液中で種々物質の吸着を阻害するパーフルオロアルキル膜やMPCポリマー膜(フォスファチジルコリン系ポリマー)表面でできた基板をfsレーザーでエッチングする操作を繰り返すことで、(1)コラーゲンやラミニン等の細胞接着因子のパターニング、(2)異種細胞の任意位置へのアレイ化に成功した。さらに、パターニングした細胞間の表面をfsレーザーで改質してラミニン等でブリッジ回路を形成すると、神経細胞では神経突起がブリッジにそって伸長し、任意の細胞回路を形成できた。また走化性細胞をブリッジ回路にそって移動させて異種細胞を接着させることができた。2)表面改質と試薬放出現象の解析:fsレーザーを液中に集光した場合と基板内部に照射した場合では異なる現象が起きていた。液中にレーザーを集光すると、多光子吸収に起因するキャビテーションバブルの発生が応力として働き、近傍にあるポリマーを破断させ、内部の試薬が液中に放出されることを、蛍光粒子を用いた実験で立証した。細胞接着阻害を起こすパーフルオロアルキル膜やMPCポリマーを表面に持つ基板の内部にフェムト秒レーザーを照射すると、パーフルオロアルキル膜ではフッ素が脱離して炭化水素が残り、MPCポリマーではアブレーションによりMPCポリマーそのものが除去されることを、原子間力顕微鏡(AFM)やX線光電子分光(XPS)で明らかにした。[意義・重要性]fsレーザーを用いた総合的な細胞アレイ基礎技術・バイオツールの可能性を世界に先駆けて示すことができた。また、神経回路の可塑性研究や創薬における毒性試験の新たなツールとなると期待できる。
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