本研究課題では、固体表面上に支持した人工生体膜内を自由に運動できる「2次元に束縛された分子系」を用い、膜内の分子を局所外部電場によって動的に操作する手法の確立を目的とした。重要な成果は2 点ある。(1)埋めこみ電極を備えた固体基板を用い、電圧印加によって膜内に埋めこんだ色素結合脂質分子の局所的な濃度勾配を形成することに成功した。これは局所電場が、側方拡散として知られる膜内の分子のブラウン運動に打ち勝ったことを意味する。(2)ナノギャップ電極を備えた固体基板を用い、電圧印加のオンオフによって自発展開の停止・開始の制御に成功した。これはナノギャップ電極における分子捕捉が自発展開の駆動エネルギーに打ち勝ったことを意味する。ナノギャップを「分子ゲート」として機能させ、動的な分子操作を実現させた。
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