研究概要 |
磁気ビーズをトンネル磁気抵抗効果型(TMR)磁気センサで検出するシステムを構築するために,水に高い分散性を有する磁性ナノ粒子と高磁気抵抗比を有するTMRセンサを作製することを目的とした. 磁気ビーズとして規則合金FePtナノ粒子を選択し,高分散性を有するように水溶性高分子を保護剤とする合成手法を検討した.ポリビニルピロリドン(PVP)を保護剤として用いた場合には,低濃度でしか分散することができず,粒子分散溶液の粘性も高く,マイクロ流路中で用いるには不適格であった.一方,高分子電解質を粒子表面保護剤として用いた場合には結晶構造には大きな変化を及ぼさずに高い分散性をもたらした. PVPを用いた場合と比較して10倍以上の粒子濃度(〜5mg/mL)を得ることができ,磁気信号出力を見積もる目安となる交流磁化率も大幅に増加した. 磁気センサを作製するために磁気トンネル接合(MTJ)膜を1μm角程度までの寸法で微細加工する条件について検討を行なった.特にチタンをマスクとしたドライエッチングにおいて,エッチング後の表面粗さを低減するための条件を探査した.メタノールガスを用いた反応性イオンエッチングを行なえるように真空排気システムを更新したが,高周波二極スパッタでのアルゴンイオンエッチングにおいても以下の条件を整えることによってナノメートル厚さの層構造を有するMTJ膜において平均表面粗さを2-3nmに低減することができた.その条件は,基板ホルダを導電体であるチタンとすること,投入電力を低下させること,最適ガス圧(放電可能最低圧力よりやや高い値)とすることであった.またこの条件でエッチングした後に,マスクの下のMTJ膜の磁気特性には熱的なダメージは見られなかった.
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