生体関連物質の標識となる磁気ビーズ、その磁化を検出する磁気センサ、それらを組み込むマイクロ流体デバイスを主たる構成要素とする磁気センシング・システムの構築を目指した。 磁気ビーズに関しては、高分子電解質膜を骨格構造として、高い磁気異方性を有する5nm程度の大きさの規則合金FePtナノ粒子がシェル状に集積した中空磁性ビーズの作製に成功した。全体系は約300nmである。これは室温付近以上にブロッキング温度を有するように特性をチューニングできるため、動作温度領域で高い磁化率を示すように設計できることがわかった。 磁気センサの作製に関しては引き続き作製プロセスの開発とともに、素子の絶縁破壊の挙動を原子間力顕微鏡を用いた通電測定により評価し、1-2Vの範囲内で破壊が起こることを明らかにした。破壊電圧のばらつきは上部電極取り出しのための孔の形成を行なうエッチング特性のばらつきが原因であると考えられる。 マイクロ流体デバイスの作製に関しては、厚膜レジストの鋳型を用いてポリジメチルシロキサン(PDMS)でできた10-50μm幅(高さも同程度)の流路を作製するために、光リソグラフィ用マスクの作製とともに、反応性イオンエッチング、UVオゾン処理などのプロセス条件を確立した。磁気ビーズ分散溶液をこの流路内に流し、永久磁石の磁界による吸引実験を行い、デジタルマイクロスコープを用いて流路内での磁気ビーズの磁気集積について観察を行なった。さらに上記のTMRセンサを形成したシリコン基板上にPDMS流路を貼り合わせて、簡便なセンシング・デバイスを試作した。ただし、作製中の静電破壊などの対策が十分ではなくマイクロ流路内での磁気ビーズ・センシングには至らなかった。
|