研究概要 |
巨大磁気抵抗効果(GMR)の発見以来,電子のスピン依存現象に着目したスピントロニクスと呼ばれる新しい学問分野が形成され,今後更なる発展が期待されている.強磁性層間の磁気層間結合は,デバイスの基本原理となることから,一つの大きなトピックである.現在,強磁性(F)結合,反強磁性(AF)結合のスイッチングは磁場のみでなされており,まだ用途が限定されている.本研究では,温度と光に敏感な半導体を非磁性層に用いた強磁性金属/半導体超格子を作製して,強磁性層層間結合に及ぼす温度および光照射の効果を詳細に検討することを目的とした. 一昨年の研究で光照射に対するAF,Fのスイッチングと考えられる現象が観測された.しかし,その変化は小さく感知するのが大変であった.そこで昨年は,まず構造をCIPからCPP構造に変えて,層間交換結合の変化に対する電気抵抗の変化幅を高めることを目指した.その結果,約一桁大きな10%近い変化幅が得られるようになった.また,光照射を行う前実験として,電流注入により層間結合がどのように変化するのかを調べた.電流注入による層間結合の変化を観測することができている. 温度変調に関しては,層間結合に明白な変化が得られた.積層膜でも三層膜でも室温でAF結合膜は,温度の低下とともに次第にその結合強度は弱くなりF結合に変わる結果が得られている. 今年度は,温度変調による層間結合の変化のより詳細な調査,解析を進めつつ,光照射の実験に注力する.電流注入による磁化反転が誘起される電流密度以下で,光照射実験を遂行する.照射に用いる波長1.31μmの半導体レーザーやそのほかの装置系はすべてそろっている.光照射による層間結合変化の実現,その変化の照射レーザー偏光依存性,エネルギー依存性,応答速度など,そのメカニズムの解明を目指し研究を進めていく.
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