研究概要 |
差別化された製品の需要推定は、ブランド価値の評価や価格設定などマーケティングにとって重要な問題の研究に必要不可欠である。しかしながら高価で市場規模が大きい自動車のような耐久消費財の場合、スキャナーデータなどが存在せず、製品の市場シェアとその特性のみが入手可能な場合も少なくない。平成16〜19年度において研究代表者らが進めてきた頻度理論に基づく研究結果に対してマーケティング分野の競争的価格設定の研究として見逃せないのがYang,Chen and Allenbyが2003年Quantitative Marketing and Economicsに掲載した論文"Bayesian Analysis of Simultaneous Demand and Supply"である。この中で彼らは消費者の購買記録が入手可能な場合について需要と供給の両面を考慮に入れた市場均衡におけるベイズ理論に基づく推定手法を提案した。消費者の効用の係数に確率分布を仮定することによって消費者間の嗜好の違いを反映させ、ベイズ理論を用いてパラメータ推定方法を確立したこの研究はその後製品の市場シェアのみが入手可能な場合へと拡張されてJiang,Manchanda,and Rossiの2007年論文"Bayesian analysis of random coefficient logit model using aggregatedata"に受け継がれ、製品価格と市場シェアという内生変数の尤度関数からベイズ理論に基づきパラメータの事後分布を導出する方向に発展した。この論文はYang,Chen and Allenby(2003)が提案したlimited information modelを採用している。これは操作変数と確率的誤差項の和として供給側からみた製品価格を単純に定式化したモデルであり、供給側の価格競争は定式化されていない。またRomeoは2007年論文においてBerry,Levinsohn,andPakes(1995)と同様操作変数に基づいた目的関数に基づいた事後分布をつくる方法を提唱した。本研究では市場レベルのデータしか入手可能でない場合の需要・供給両サイドを考慮したfull information likelihoodに基づくベイズ推定方法を提案した。
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