研究課題
基盤研究(B)
新型インフルエンザや原発事故に端を発する風評被害など、ある特定の地域で発生した社会的イベントがその地域に留まることなく、瞬く間に、世界中に広がることを、我々は現代的な現象として認識し始めている。このような現象は、マーケットやネットワークといった参加者の相互依存の関係が内包される環境のもとで発生している。本研究は、この「社会的なイベント」を「情報」と捉え、その情報が拡散・伝播するメカニズムを明らかにすることを目的としている。本研究では、情報伝播のメカニズムを、情報の受け手でありかつ情報の拡散の担い手である、マーケットやネットワークの参加者の行動(振る舞い)を規定するマイクロな側面と、参加者の結合・相互作用の結果生じる情報伝播のマクロ的側面から捉えることを試みている。マイクロな側面では、(1)情報形成のメカニズム、(2)マーケットなどの参加者の視点から、形成された情報への接触、情報の価値評価ならびに取捨選択のメカニズム、続いて(3)購買・投資といった行動への情報の結びつきのメカニズムに分解し分析ならびにモデル化を行っている。さらに、マクロ的側面では、(4)参加者の組織的な結合や相互作用を加味したマーケット全体での情報伝播のメカニズムのモデル化とその検証を行う。本研究では、情報伝播が発生する代表的な領域として、クチコミなど情報伝播研究が進んでいるマーケティング領域、コンピュータウィルスなど身近な現象を内包する情報通信ネットワーク領域、加えて、金融危機など世界規模での現象として認識できる金融領域を設定し、各領域固有の特徴を加味した現象の説明を試みるともに、それらを融合した統合的なモデルの構築を目指している。理論的なモデルの構築と実データによる検証に加え、マルチエージェントベースのシミュレーションモデルを構築し、理論的なモデルの妥当性ならびに説明力の検証を実施する。
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http://www2.gssm.otsuka.tsukuba.ac.jp/staff/saru/diffusion_index.html