研究課題
日本のソフトウェア産業、特にエンタプライズ系のソフトウェア・エンジニアリングの実践力を測定する尺度(SE度)、および経営力、経営環境の関係性分析をおこなった。2007年度の基礎調査のデータに基づき分析した結果、SE度を構成する要素の内、人材育成力、プロジェクト管理力、品質管理力が、顧客接点力、開発技術力、プロセス改善力、アウトプット力に正の影響を与えるといった、2006年度のデータに基づく因果構造が概ね再現した。また、ITベンダをメーカ系・ユーザ系・独立系に分けて因果構造を分析した結果、これら3種類の構造は大きく異なるが、メーカ系が比較的、全体データの構造と似ていることなどが分かった。経営環境については、ソフトウェア技術者数、カスタムメード率、顧客基盤などソフトウェア産業の規定要因を因子分析してSE度の因果構造と連結した。この結果、ソフトウェア技術者数や売上などから抽出された規模を表す因子が、最上流の人材育成力に大きく影響し、下流に配置されるその他のSE度の要素に正の影響を与える構造が判明した。経営力を含む上記の因果構造に関する経年比較については、10年間(1999〜2008年度)の財務データを購入してパネル分析の準備を行った。基礎調査(2005〜2007年度)に回答したのべ150社を抽出た結果、10年にわたり75-100社の財務データが活用可能であることなどが分かった。ソフトウェア産業の競争力規定要因に関する国際比較については、米国・中国などを訪問し、次年度以降の分析の枠組みを検討した。技術基盤・開発プロセスのパラダイム転換を視野に入れて、ソフウェア開発産業におけるグローバル競争の論点を抽出する上で、各国で異なる産業構造を考慮することが重要である点を確認した。
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