本研究は現行の昇降機・遊戯機械の定期検査制度における緊急課題である「構造健全性判断基準の定量化」に関し、運用時の材料劣化の程度、部分破損の許容量、摺動部の摩耗や締結部の弛緩の程度について、固体伝達波より特徴抽出して得られる新たな応答物理量を定義して、構造安全指標となる判断基準値について分析・調査し、検査資格者の定期点検に際したより的確な業務方法を提示することを研究課題とした。平成20年度は、従来の昇降機・遊戯機械の事故・故障の主な要因を分析し、安全対策の重要度を定量化し、昇降機の構造不全に関連する要因から重要度の高い部位について、部材疲労試験、機械要素摩擦摩耗試験、締結部振動耐久性試験を実施し、巻上げ機綱車のロープ溝やブレーキパットの摩耗に対する許容限界、さらにレールブランケットやかご構造の締結部の緩みに係わる異常振動の発生の有無について検討した。 また、「常時の予見保全を支援するシステム」の開発に関しては、圧電ポリマセンサや加速度センサをエレベータ昇降路およびかごの支持部材に実装し、健常時の昇降運動時の固体伝達波の応答信号を計測して、基準応答信号の性質や変動についての基礎的な分析を行った。これらの応答信号の分析に際しては、周波数分解能と時間分解能双方に抽出精度が高い離散ウェーブレット変換やコヒーレンス評価を用い、特徴抽出の可否の可能性を検討した。
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