研究概要 |
津波堆積物による古津波の検出は、地域の津波災害を評価する上で、現在では一般的な試みとなっている。津波による堆積作用は、物質の運搬過程からみると、押し波と引き波で大きく異なっている。押し波の堆積作用は近年の津波観測により理解が進んでいるが、引き波に関しては、観察が大きく制約され、また運搬過程が多岐に亘るが故に、多くが不明である。津波の発生を堆積記録に見いだす場合には、海側での地質試料を用いるのが堆積学的な観点で優れている。そこで、本研究では、海浜から沖浜にかけての水域での引き波による堆積作用の解明を目指した。2004年インド洋津波による引き波の堆積学的現象を、タイのプーケット沖を例に、堆積物を採取し、底生動物の移送と定着から引き波による物質の運搬過程を検証した。併せて,869年貞観津波に伴う堆積物運搬を仙台平野で掘削により検討した。2004年インド洋津波に伴う引き波による物質運搬現象については、底生有孔虫の生態復元の古生物学的手法により、その解明することに成功した。結果は、「Foraminiferal evidence of submarine sediment transport and deposition by backwash during the 2004 Indian Ocean tsunami」と題して、Island Arc誌に掲載(2009,vol.18,p.513-525)された。平成21年度後半では津波石の移動過程に着いて観測と数値予測の両面で解析を進め、「Distribution of boulders at Miyara Bay of Ishigaki Island, Japan : A flow characteristic indicator of the tsunamis and storm waves.」と題して、Island Arc誌に掲載予定(2010,vol.18)である。
|