研究課題
アムールプレート東縁の活構造は日本海形成期の断裂の再活動とみられ、個々の活断層区に特有の形成史があり、地殻応力場や歪場に変化があれば地体構造ごとに挙動が異なる。2011年東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震)では広域的に地震活動が活発化した。この状況に即して本研究では、海溝型地震の余効変動と活断層型地震との連関に注目して地体構造の挙動を検討した結果、以下の知見が得られた。1.東北沖地震前後の海底変動地形を判読・比較した結果、地形変化は海溝陸側斜面下部に集中することを見出し、三陸沖で日本海溝の海溝軸に生じた海底地震断層を同定した。2.東北沖地震の余効変動については、GPS測地データの解析から東北日本弧で顕著な東向きの移動と伸長が見られた。余効変動量はほぼ震源距離に応じた分布を示すが、日本海東縁から西日本側に延長する帯域が認められる。3.東北沖地震による中規模の誘発地震は、主要地体構造境界のアムールプレート東縁変動帯および男鹿一牡鹿構造線で発生した。4.東北沖地震以降に発生した上盤側の地殻地震では、起震応力場の主軸配置に反転などの変化は認められず、テクトニック応力場に強固な持続性が示された。以上から本研究の計画当初に提起した仮設について以下の見解をまとめた。(1)本州中部を横断する新潟一神戸歪集中帯でも東フェルゲンツの伸長歪が認められるが、東北沖地震前後で地震の断層型に変化はない。歪と応力の非線形関係は、同帯の形成が「太平洋プレートの押し」など単一の原因ではないこと、さらに上部地殻での地震や堆積層の変形の駆動力は下部地殻に由来する証拠と考えられる。(2)東北沖地震の余効変動では、上盤のオホーツクプレート・アムールプレートの境界を越えて伸長歪場が展開している。この状況を合理的に説明するためには、アムールプレートの東進により東北日本と西南日本が力学的に結合するモデルが有力である。
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Geophysical Journal International
巻: 183 ページ: 977-990