研究概要 |
本研究は,地震発生の可能性が高いと評価される特定の断層に地震が発生したときに,生成・伝播する地震動を予測するために開発された強震動予測「レシピ」を、最近発生した内外の被害地震の観測記録に基づいて有効性を検証し,新たな「レシピ」の提案を行うことを目的している。 今年度は2007年中越沖地震(Mj6.8)に着目し,その強震動評価から「レシピ」の検証を行った。まず,経験的グリーン関数法および理論的グリーン関数法を用いてターゲット周期帯域の異なる震源インバージョンを実施した。次に,他の研究者による震源インバージョン結果を収集・整理した。収集した震源インバージョン結果に基づき,大きなすべり量を持つ領域(以下,アスペリティ領域)を抽出した結果,アスペリティの位置は各研究者によってばらつきがあるもものの,その個数はどのモデルも共通で3〜4個であることがわかった。抽出されたアスペリティの個数は,中越沖地震のフォーワード・モデリングの研究結果と調和的である。さらに,アスペリティ領域内の平均すべり量は内陸地殻内地震の平均的な結果と調和的である一方,アスペリティ領域の面積は平均的な結果に比べて約70%小さいことがわかった。このことは,中越沖地震におけるアスペリティ領域内の応力降下量は平均的な内陸地震に比べて1.5倍程度大きいことを示している。 また,柏崎刈羽原子力発電所周辺における最新の3次元地盤構造モデルを入手し,その地盤構造モデルによる波線理論を用いたフォーワード・シミュレーションを行った。その結果,柏崎刈羽原子力発電所(1号機)において地震波線の集中による地震動の増幅効果を示唆する結果が得られた。 以上から,本研究において,(1)アスペリティ領域の平均応力降下量について1.5倍程度のバラツキがあること,(2)地盤構造による3次元的な地震波の集中があることを示した。なお,地震計の納品が年度末になり,今年度予定のテスト計測は来年度実施する。
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