研究概要 |
(課題1,2)2004年北海道留萌支庁南部地震(Mj6.1)および2009年駿河湾地震(Mj6.5)に着目し,それらの強震動評価を行った。経験的グリーン関数(周波数:約0.1~10Hz)および理論的グリーン関数(周波数:約0.1~1Hz)による震源モデルの計算波形と観測波形は調和的であり,アスペリティ領域から広帯域の地震動が励起されることが確認できた。また,2つの地震の強震動評価から,ある特定サイトにおいて破壊伝播効果が大きく影響していることを確認した。 (課題3)染井・他(2009)は近年発生した被害地震(M6クラス)およびその余震の記録のスペクトル比を用いて応力降下量を推定しており,断層タイプ(横ずれ・逆断層)による応力降下量の明瞭な差異は確認できないと報告している。一方,佐藤(2009)はスペクトルインバージョンに基づいて短周期レベルを推定しており,その結果,断層タイプ別で短周期レベルが異なるという報告をしている。 (課題4)2008年四川地震(Mw7.9)で被害が発生した都江堰と綿竹において,5階建ての構造物の建物基礎と5階および自由地盤で同時微動観測を実施し,それぞれの伝達関数および建物の応答特性を計算した。その結果,都江堰の構造物の固有周期は4.5Hz,綿竹では3Hzとなった。都江堰の構造物は補強してあったため,綿竹の固有周期よりも高周波数となったと考えられ,補強による構造物の周期特性の変化が確認できた。 (課題5)課題1,2から得られたアスペリティ面積や応力降下量は経験的なスケーリング則と調和的であり,強震動予測レシピの有効性が確認できた。一方,課題3の短周期レベルについては断層タイプ別で異なるという報告と差異は確認できないという報告がある。強震動予測レシピに断層タイプ別の加速度レベルの違いを取り入れるべきかどうか,今後,検討を進める必要がある。
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