研究概要 |
(課題1,2,3,5)震源モデルに基づいた強震動予測レシピの検証およびその改良 Somerville et al. (1999)のスケーリング則(~Mw7.2)では範囲外となる2008年中国四川地震(Mw7.9)を対象にEGFを用いてアスペリティを推定した結果,既往の結果と調和的であった。一方,短周期(約0.3秒)域をターゲットとするEGFに準じた方法を用いた震源インバージョンによるアスペリティは全断層面積の約10%であり,既往の結果(約22%)と異なる。長大断層(Mw8程度)の動力学シミュレーションからも,アスペリティ(すべり量:大)と強震動生成領域(すべり速度:大)は異なるという結果が得られている(入倉・他,2011)。本研究結果から,強震動に寄与する短周期域のスケーリング則は既往の結果と異なる可能性が示唆された。数値シミュレーションから破壊伝播効果が大きい長周期域ほど,破壊開始点・アスペリティ・観測点の位置が予測地震動に影響することを確認した。また,2004年北海道留萌支庁南部地震(Mj6.1)の検討から,震源近傍において短周期域(約0.2秒)まで破壊伝播効果が認められた。 (課題4)構造物被害に関係する強震動指標の解明 微動観測による建物のヘルスモニタリング適用検討のため,deconvolution法を用いて2008年中国四川地震(Mw7.9)において半壊したレンガ造建物のS波の伝播速度を評価した。その結果,平均S波伝播速度は健全な建物より半分以下,被害がさらに甚大な層のS波伝播速度は約1/4に低下することを確認した。また,1995年兵庫県南部地震(Mj7.3)のシミュレーション結果(松島・川瀬,2000)と建物被害分布の比較(Onishi and Hayashi, 2008)から,建物被害と関連する指標としては長周期域を対象とした速度応答スペクトルが適切であることが示された。
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