本研究は、豪雨時の下水道が果たす雨水排水機能に着目し、模型実験を通して数値解析モデルの検証を行うための研究である。平成20年度はその準備期間に当たるが、以下にその成果をまとめる。 ■各地で発生した内水氾濫および下水道機構に関する調査 平成20年は各地で氾濫災害が発生したが、大規模な都市での内水氾濫災害は発生しなかった。そこで、平成18年に発生した島根県松江市での内水氾濫災害について、降水量、河川水位、都市の浸水域・浸水深などの実績データとともに、松江市の下水道の諸元や位置、整備状況などの情報を収集した。また、建設コンサルタントなどで下水道の業務に従事する技術者から、都市の雨水排水機構の概要や問題点についての情報を収集した。さらに、国内の各研究者が開発した内水氾濫解析モデルについて詳細に調査し、意見交換を行った。 ■下水道による雨水排水機能の実験的研究 豪雨時に都市域の下水道システムがどのように機能しているのか、下水道を含む模式化した都市域に実際に通水して調べるため、京都大学防災研究所宇治川オープンラボラトリー内に内水氾濫実験装置を製作し、設置した。この模型を用いることによって、地上や建物の屋上に降った雨が、排水口、雨水ますなどを経由して下水道管渠に排水される過程を定性的に再現できること、さらに下水道管渠の上流端からはポンプにより流量を与えることができ、下流端での管渠内水位を調節することができることを確認した。
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