研究課題
我々は、出芽酵母の完全長cDNA解析によって、予想外に多数の非コードRNA(ncRNA)の発現を見出した(Miura et al.PNAS 2006)。本研究では、モデル生物としての酵母の特性を活用しながら、これら多数のncRNAの中から機能性分子を同定する方法論の開発を目指して、研究を進めてきた。今年度は、特に酵母人工染色体と次世代シーケンサを用いる高出力タグカウント技術を用いて、異種生物ゲノム配列からの転写開始を解析し、非生物学的なノイズ性転写の基盤にある物理化学的特性を解明する試みに力点を置いた。具体的には、新たに導入した小型次世代シーケンサを駆使して、これまで開発を進めてきた独自のRNA-PET法に更に改良を加えて実用レベルにまで洗練した。これを用いて、マイコプラズマゲノムを人工染色体として保持した酵母株のRNA-PET解析を行ない、ゲノムにマッピングすることで転写開始点とポリアデニル化部位を同定した。更に、エクソソーム核因子Rrp6の遺伝子を破壊してncRNAの安定化を図った株についても、同様の解析を行った。更に、これらの転写の基盤となるエピゲノム情報を取得すべく、マイクロコッカルヌクレアーゼ処理によって得られたモノヌクレオソーム断片の両端を次世代シーケンサでシーケンスし、ゲノムにマッピングを行なうことでヌクレオソーム配置を決定した。このようにして得られたデータを可視化するゲノムブラウザも開発して、非機能性ゲノム領域のクロマチン構造と転写状況を示すユニークなデータベースを構築した。これにより、今後の詳細な解析の基盤が整備された。
すべて 2011
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Genetics
巻: 189 ページ: 469-478