研究概要 |
近年、miRNAなどの小分子RNA(ncRNA)が、さまざまなメカニズムで広い範囲の細胞機能や発生過程に重要な役割を果たしていることが明らかになってきている。また、それら小分子RNAの生合成や機能発現にはDicer,Drosha,Piwi/Argonauteなどの遺伝子ファミリーも種を超えて関わっていることが明らかにされつつある。そこで本研究では、これまで我々が行ってきた脊椎動物のモデル生物(ホヤ)の転写制御領域に関する研究経験を活かし、理論と実験を組み合わせて、ホヤゲノムにコードされた小分子RNAの機能解明を行った。また、脊椎動物の研究へも新しい角度からの貢献を目指して、メダカなどの魚類との進化的保存性を調べた。今年度は総仕上げとして、ホヤゲノムにおける未発見のmiRNAを調べるために、まず現在入手できた(一部は投稿中)4つのmiRNA予測結果とmiRBaseのアノテーションを比較し、相互の予測結果の重なりの傾向を調べた。これによって、miRBaseに未登録のmiRNA候補をスコア付けしてリストアップし、可能性の高そうなものの妥当性を現在検討中である。たとえば次世代シークエンサーを用いていくつかの組織で網羅的なTSS-seq解析を行った結果とも比較している。次に、前年度に続いて、ゼブラフィッシュなどの脊椎動物の筋肉細胞発生に重要な役割を果たすことが知られているmiRNAのホヤホモログについて、その転写調節領域を解析した。これらの筋肉特異的miRNAについては、メダカホモログが胚発生において果たす役割も解析して、その進化的意義を考察した。最後に、小分子RNAの生合成などに関わる遺伝子群の解析として、今年度はPiwiの機能を解析したところ、従来他の生物で知られている生殖細胞だけでなく、ホヤにおける神経系における新たな活性を発見した。
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